倪夏蓮(NI Xia Lian・ニー シャーリエン)選手は、ルクセンブルクの選手で、名前から分かる通り、中国からの帰化選手です。
「世界最強のペン粒おばちゃん」と一部では親しまれ、その卓球技術もさることながら、とても表情が豊かで、負けて悔しがるときの顔と勝ったときの笑顔がとても素敵なおばちゃんです。

親子以上、孫と祖母くらいに年齢が違う若い選手と対戦し、勝利している姿は、正直びっくりするね。



東京オリンピックのシングルスでは、残念ながら1回戦負けしちゃったけど、若い選手と競り合っている姿は、話題になっていたね。
倪夏蓮選手の実績
世界ランキング
世界ランキング100位以内に入っている選手の中で、なんと最年長の58歳。
部門 | 順位 | 部門 | 最高ランキング | 取得時期 | |
---|---|---|---|---|---|
シニア | 2022年19週 | 36 | シニア | 8 | 2002年4月 |
世界ランキング自己最高の8位になったとき、すでに38歳…。
ママ(1992年と2003年にお子様が生まれています)でも世界ランキング1桁です。
いやいや…、感服しますね。



女性は結婚や出産を期に引退しちゃう選手が多い中、お子さまが生まれてもなお、第一線で活躍する現役選手であり続ける姿勢がすごい!!
このまま還暦を過ぎてもなお、世界ランキング2桁代を保ってほしいものです。
主な戦績
選手としてのキャリアが長いだけに、大会実績もそれなりにたくさんあります。ここでは代表的なものだけに絞り込みます。
倪 夏蓮選手はかつては中国代表選手でしたが、1989年(26歳)に中国を離れてヨーロッパに渡り、1991年からルクセンブルク代表選手として活躍。
東京オリンピックでも、2021年世界卓球でも、ルクセンブルク代表選手として活躍している姿は話題になっています。
国籍 | 開催年 | 大会名 | 成績 |
---|---|---|---|
中国 | 1984 | アジア選手権大会 | 準優勝 |
中国 | 1985 | アジア選手権大会 | 準優勝 |
LUX | 1996 | プロツアー・ベルグラード | 3位 |
LUX | 1996 | ヨーロッパTOP12・シャルルロア | 優勝 |
LUX | 1997 | ヨーロッパTOP12・エイントホーフェン | 優勝 |
LUX | 1997 | プロツアー・グダニスク | 準優勝 |
LUX | 1997 | プロツアー・ケタリング | 3位 |
LUX | 1998 | ヨーロッパ選手権大会・エイントホーフェン | 優勝 |
LUX | 1998 | ヨーロッパTOP12・ハルムスタード | 優勝 |
LUX | 1998 | プロツアー・ヒューストン | 優勝 |
LUX | 1999 | ヨーロッパ選手権大会・スプリト | 3位 |
LUX | 1999 | プロツアー・メルボルン | 3位 |
LUX | 1999 | プロツアー・ドーハ | 2位 |
LUX | 2000 | ヨーロッパTOP12・アラッシオ | 3位 |
LUX | 2001 | ヨーロッパ選手権大会・ヴェルス | 準優勝 |
LUX | 2002 | ヨーロッパ選手権大会・ザグレブ | 優勝 |
LUX | 2002 | ヨーロッパTOP12・ロッテルダム | 3位 |
LUX | 2007 | ヨーロッパ選手権大会・ベルグラード | 準優勝 |
LUX | 2012 | ヨーロッパTOP12・ビルールバンヌ | 3位 |
LUX | 2014 | チャレンジシリーズ・ラゴス | 3位 |
LUX | 2018 | ヨーロッパ選手権大会・アリカンテ | 3位 |
LUX | 2018 | チャレンジシリーズ・ザグレブ | 3位 |
最近は流石に上位入賞することは少なくなってきたとはいえ、いやはやすごい実績ですね。
パワーやスピードよりも、技術と経験が物を言うペン粒という特殊な戦型も関係しているとは思います。
2度の結婚と、2回の出産を経てもなお、第一線のトッププレーヤーとして活躍し続けているという実績は、同じ女性として尊敬に値します。脱帽します。
中国を離れてルクセンブルクに渡り、夫でありコーチであるトニー・ダニエルソンと出会ったことが大きいのではないでしょうか。中国にとどまっていたら、今なお現役であり続けることはできなかったかもしれません。
倪夏蓮選手のプレー
夫でありコーチでもあるトニー・ダニエルソンの表情と合わせて見るととても微笑ましくて、厳しい試合の中にも癒やしを感じます。
80年代の元中国代表 対 現在の中国代表の対決とも言える試合です。年齢差は、ちょうど親子ぐらいになるのではないでしょうか。
対戦相手の朱雨玲選手は世界ランク1、2位を争うような超トップ選手です。
朱雨玲選手がパワーで押し込んだボールを倪夏蓮選手が粒高面でブロックするため、いつもと違ってボールが伸びてみません。 あの朱選手の態勢がちょっと崩されてしまっているような場面が、見られます。
相手がスマッシュを打ってきたら、つい後ろに下がってボールを拾おうとしますが、粒高で返球したボールはそこまで伸びていかないんです。
そこでちょっと苛ついてスキなんか見せようものなら、ペン粒特有の巧みなコース取りで朱選手を右や左へと振り回しています。
いつも粒高面でプレーしていると思いきや、時々ラケットを反転させて裏ソフトラバーの面で打っていることもあります。



両方の面で打てるのは、戦術に幅が出ますし、強みになります。
でも、朱選手もトップ選手だけあって、倪選手の粒高変化にだんだん慣れていって戸惑う場面がなくなってきていますし、最後は朱選手のパワーのほうが圧倒している感じです。
試合時間世界最長記録
当時世界最長記録となったのITTF公認の試合。
現在は佐藤瞳vs. 加藤美優の試合がこの記録を抜いてトップとなっていますが、それまではこの試合が世界最長記録でした。
動画の長さが1時間半にも及んでいることからわかるように、激しい大接戦だったことが伺えます。
粒高のスマッシュやドライブは伸びていかないので、橋本選手が後ろに下がらずにずっと前陣カットしています。
大きく動くカットマンの方に目が行ってしまいがちですが、倪選手も結構動いてます。大きくはありませんが、細かく動いています。
基本的に緩いドライブでカットを返球していて、確実に攻撃が決まりそうだと判断したときのみ攻撃を仕掛けています。
1時間ぐらい経ったあたりから、さすがの橋本選手も疲れが見えてきます。
6ゲーム目、橋本選手は何度もマッチポイントを取りながら、あと1本がなかなか取れず,14-16で落としてしまい、セットカウント3-3になってしまいます。
最終ゲーム
迎える最終ゲームは、お互いのボールに慣れてきたこともあり、ラリーがとにかく続きます。
お互いに攻撃しても返ってきます。
最終ゲームは7-8になったところで促進ルールが導入されることになります。
促進ルールが導入された最終ゲームも、何度もジュースとなるシーソーゲーム!
最後は倪選手が18-16で勝利しました。



この年齢で1時間半にもおよぶ試合に耐えられるという体力というかスタミナがスゴイわ!
私は体力がないので、そんな長時間試合なんてやってられません。私だったら、すぐにスタミナ切れで負ける自身があります。
倪夏蓮選手の使用用具


倪夏蓮選手はVICTASの契約選手です。
VICTAS スワット
程よい弾みがあり、初心者から上級者まで使用できる定番ラケット。
以前は廃盤になったパーソンパワープレイを用いていましたが、現在はVICTASのスワットを使用しています。VICTASと契約したからかもしれません。
倪夏蓮選手はもともと表速攻の攻撃型選手だったということもあって、ラケットも守備よりも攻撃面を重視した選択になっています。


フォア面 カールP-1R OX
倪選手は粒高面でバシバシ攻撃していますが、これ、信じられないことに攻撃がしにくいカールP-1V(OX)なんですよね。
粒高ラバーでこんなに打てるものなのか、しかもカールP1V(OX)!
変化は大きい反面、安定性がないという特徴があるので、スポンジありのソフトラバーをカットマンやペン粒選手が好んで使用しているものですが、倪選手スポンジなしの一枚ラバーであの攻撃をしています!
「日々の練習で1週間持つか持たないかぐらいで粒が切れてしまうのが悩みのタネ」と、とあるインタビューで答えていました。


バック面 VICTAS VO>102
カタログには、攻撃的ハイエナジーテンション表ソフトとあります。
この表現から察するに、球離れが良くて、よく弾むラバーであることがわかります。
粒の形状は台形で横目なので、回転もある程度かけやすく、安定した球が打てるのではないでしょうか。


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