卓球のラバーにはさまざまな種類(裏ソフトラバー・表ソフトラバー・粒高ラバー・アンチラバー)があり、その中でも「粒高ラバー」はその独特な性質から、独特なプレースタイルを生み出しています。
粒高ラバーはイボ高とも呼ばれ、特に年配者にイボと呼ぶ人が多く見られます。
しかし、粒高ラバーがどんなものなのか、その特徴や効果を詳しく理解している人は意外と少ないかもしれません。
粒高ラバーも表ソフトラバーも表面がツブツブしているけど、粒高ラバーって何?
表ソフトラバーも粒高ラバーもどちらも見た目は似ています。
表ソフトラバーを使っていても、「粒かよ」と言ってくる人もいるからね。違いなんてわからな人は案外多いかもしれないよ。
でもやはり、粒高ラバーと表ソフトラバーは別のカテゴリーとして販売されているということは、表ソフトラバーと粒高ラバーは明確な定義があり、違いがあるということを意味しています。
粒高ラバーとは一体どういったものなのでしょうか?
本記事では、粒高ラバーとは何か、そして他のラバーと何が異なるのか、基本的な定義と特徴を徹底解説します。
粒高ラバーの特性を知り、プレーに取り入れることで、これまでにない戦術やプレースタイルの幅が広がるかもしれません。
粒高ラバーの少し変わった卓球の世界を少し覗いてみましょう!
粒高の定義
ラケット本体の打球面は、接着剤を含む全体の厚さが2.0mmを超えない粒を外向きにしたラバーか、接着剤を含む全体の厚さが4.0mm以下の粒を内向き、または外向きにしたサンドイッチラバー(ソフトラバー)で覆われていなければならない。
「ツブラバー」とは、天然または合成の気泡を含まない一層のゴムで、ツブがその表面1平方cmに10以上30以下の密度で均等に分布しているものをいう。
日本卓球ルール2022
粒高ラバーとは何か、ルール上では上記のようになっているだけで、明確に定義されているわけではありません。
一般的に表ラバーと呼ばれるラバーの粒の高さは通常1.0mmですが、粒高と呼ばれるラバーの粒の高さは1.4~1.6mmです。
ちなみに、表と粒高の中間的な性質を持つラバーは変化系表や半粒呼ばれ、代表的なものにアタック8があります。アタック8の粒の高さは1.2mmであり、粒高ラバーとは呼ばれません。
粒のアスペクト比
粒の高さを粒の直径で割ったものをアスペクト比といいます。
このアスペクト比が0.9未満のものを表、0.9~1.1のものを粒高とカタログ表記の都合上分類しているに過ぎません。
アスペクト比が大きいものほど変化が大きくなるよ。
アスペクト比は一応国際基準で定められており、ラバーのカタログを見ると、変化が大きいといわれるラバーは粒高ラバーはこの国際基準ギリギリ、最大限のアスペクト比であることを謳っています。
変化よりも安定重視の粒高のアスペクト比は低いです。
そもそもここでいう変化とはなにか?変化についてはこちらで解説しています。
粒高ラバーの特徴と効果:なぜ「粒高」は特別なのか?
粒高ラバーには、他のラバーにはない独特の特徴と効果があります。
ここでは、粒高ラバーがどういった場面で威力を発揮するのか、その具体的な特徴を紹介します。
裏ソフトラバーと比較すると、粒高ラバーはボールを「捉える」性質が弱く、ボールに独特の揺れや変化をつけやすいのがポイントです。
一方で、スピードを出しにくいという性質もあるため、粒高ラバーは守備的なスタイルや変化球を重視する選手に向いていると言われます。
粒高で打ったボールの特徴は以下の2つ。
- 相手の回転を利用できる
- 特殊なボールの軌道を生み出す
相手の回転を利用できる
粒高ラバーは、自ら回転を掛けることはかなり難しいですが、相手の回転を逆手に取ることができます。
相手が強いトップスピンをかけてきた場合、粒高ラバーで打ち返すことで、その回転を逆回転(強烈な下回転)で返すことができ、相手にとっては予測しづらい変化球に見えます。
裏ソフトラバーで返球した場合
裏ソフトラバーで返球した時の回転を横から見た図
一般的な裏ソフトラバーでボールを返球する場合、上回転のボールに対しては上回転をかけ直して返球しています。
その様子を横から見ると、上回転のボールに対して逆回転の回転をかけ直して相手に返球しています。
つまり、自分がかけた上回転のボールに対して、相手も上回転をかけて返すので、自分にとって上回転のボールが返ってきます。
上回転には上回転、下回転には下回転のボールを返すのが裏ソフトラバー。
粒高ラバーで返球した場合
粒高ラバーで返球する場合、回転をかけることができないので、上回転のボールを上回転に掛け直して返すということが一般的にできません。
粒高ラバーで返球したボールを横から見た図
基本的に、回転を変化させることなく相手にそのまま返します。
横から見ると、ボールの回転は何も変化していません。
だから、相手にとっては上回転が逆の下回転になって返ってくるように見えるのです。
特殊なボールの軌道を生み出す
自ら回転をかけられないのが、粒高ラバーの最大の欠点であり、最大のメリットでもあります。
この性質を逆手に取り、ナックルボールにすることによって、相手にとっては独特なボールの起動になって返ってくるように見えるのです。
ナックルボールは独特な揺れと変化になり、結果として相手のリズムを崩しやすいというメリットに変わります。
特に、ボールがゆっくりと「揺れる」ような変化が起きることがあり、相手にとってひじょうに打ちにくいボールになります。
無回転のボールは、ボールの後ろにカルマン渦という不規則な渦が発生するため、予測不可能な揺れ方をします。
流れの中に障害物、あるいは流体の中で固体が動くと、その後方には交互に渦の列ができます。それゆえ、ナックルボールは揺れます。
ただこのナックルボールは、自分にとっても打ちにくいという諸刃の剣でもあるので、ナックルにして打ち返すときは注意が必要です。
無回転で飛んでいくボールの後ろにできるカルマン渦について、興味のある方はこちらをどうぞ。
無回転で飛んでいくボールは、本当に揺れます。
回転のあるボールに比べて伸びてきませんし、落ちます。
いつもの上回転の間隔でボールを待っていると、
- ボールが揺れていることにまず驚いて一瞬怯み
- ボールが伸びてこないこと戸惑います
相手が一瞬怯んだ隙をついていくのが粒高ラバー使い!
まとめ
粒高ラバーは、他のラバーとは一線を画す独特の特徴を持っています。
相手の回転を活かし、変化を与えた返球ができるのは、粒高ラバーならではの強み。
守備的なスタイルや、相手のリズムを崩してミスを誘う戦術を得意とする選手には、ひじょうに強力な武器になります。
本記事で紹介したように、粒高ラバーの長所は同時に短所でもありますが、その性質を理解し、戦術に活かすことがに大切です。
また、初心者向けの選び方やおすすめラバーも参考に、自分に合ったラバーを試してみてください。
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