地方の小さな大会では、敗者審判あるいは相互審判で出場選手や控え選手が審判を務めることが多いのです。
しかし大きな大会になると、公認審判員がつきます。
小学生の頃から卓球をやっているような生徒なら、審判員による試合は慣れているかもしれません。
しかし公認審判員有資格者が審判をするような試合なんて、経験したことない中学生や高校生がほとんどではないでしょうか。

審判員がつく試合なんて、いつも通り試合をすればいいの?なにか特別なことをしなければいけないの?
こんな時、審判員は何を見ているのか知っているだけで、落ち着いて対応できるのではないでしょうか。
なにか指摘を受けても焦らずに、落ち着いて対応しましょう。
メンタルまで崩して試合に負けるようなことがあってはなりません。
本記事では、公認審判員が見ているポイントと、選手が気をつけてほしいことを紹介します。
公認審判員付きの試合でよく指摘すること


中学生や高校生が、よく審判員に指摘されることは3つ。
- ラケット違反
- 時間管理
- サービストス



特にサービストスはひどいです。正しいサービスの出し方を必ずマスターしてください。
審判員が行うラケットコントロール
選手が台に入った時、審判員は選手のラケットを必ずチェックします。
審判員が見ているポイントは以下の3つ
- ラバーに2mm以上の欠けや傷、はみ出しはないか
- ラバーが凸凹していないか
- ラケットに「J.T.T.A.A.」の刻印、ラバーに「J.T.T.A.A」または「ITTF」の刻印が入っているかどうか
③の「J.T.T.A.A.」の刻印は、日本の競技用の卓球ラケットを購入していれば、たいてい入っているので気にすることはありません。
まれに外国のラケットを用いている場合、この規定に引っかかります。



外国製のラケットを使用している場合、「外国製ラケット使用許可願い」を審判長に提出し、O.K.が出れば使用できるよ。
よく問題になるのは、①と②です。
規定に引っかかるようなラケットで試合ができるかどうか判断するのは大会審判長です。主審に権限はありません。



う~ん、ちょっと一緒に審判長のところへ行ってもらえるかな?審判長に見てもらおうか。
ひじょうに厳しい審判長もいれば、優しい審判長もいます。県レベルの大会は比較的甘めです。
大会審判長はO.K.を出すのがたとえ分かっていたとしても、本来はN.G.なので、一応警告のために主審は審判長の元へ選手(+ラケット)を連れていきます。
審判員による不正を防ぐため、ラケットを必ず選手に持たせたうえで審判長のところへ連れていきます。



今回はO.K.を出してあげるけど、この先の上の大会では絶対N.G.だからね。それまでには貼り直してきてよ。
言いつけを守らずに、上の大会で本当にN.G.を食らってしまうことは、稀にあります。
ラバーに2mm以上の欠けや傷、はみ出しはないか
スポンサーがついているようなトップ選手は頻繁にラバーを交換できますが、一般の中学生が高校生はそうもいきません。
ラバーは高価ですし、子どもの小遣い程度で買えるような代物ではありません。
卓球に理解のある保護者なら、大会前にラバーを貼り替えてくれるかもしれませんが、思うようにラバーを貼り替えできない選手がほとんど。



つい最近ラバーを貼り替えたばかりじゃないの!そんなお金うちにはないわよ!
各家庭の懐事情や卓球への理解に温度差があることぐらい、審判長も分かっていますので、O.K.にすることが多いです。(ただし、大会レベルと審判長によります)
ボロッボロのラバーを使用している選手は、勝ち残れないことが分かっているということもあります。上の大会に出場するような選手ほど、ラバーの状態を大会に合わせてきます。
ラバーが凸凹していないか



凸凹しているラバーは、意外にも、全国に行くような強豪校に多かったな。
- 一度ラバーを剥がして、接着剤を塗らずに再度貼り付けたのか、ラバーが剥がれかかって凸凹しているラケット
- プレー中にラバーが剥がれ落ちてきてしまうので、ラケットを台に押し付けてラバーをなんとかくっつけようとする選手
凸凹しているラバーとは、上記のような状態のもの。
そんなラバーで、まともに戦えるのかと?



剥がれかけて凸凹したラバーで戦うことは、選手のメンタルにも良くないですし、試合のパフォーマンスにも影響します
卓球の試合でラバーの凸凹や欠け・はみ出しが問題視されるのは、「公平性が失われる」からです。
欠けたり凸凹している部分、粒が欠けてしまった部分にボールが当たると、思いも寄らない回転と方向にボールが飛んでいってしまいます。
それはすなわち、相手にとって予測不能なことであり「不利」であるとされ、公平性が失われているからです。



でも、そんな欠けたところになんて、当てられるわけないでしょ。
と思うかもしれませんが、そういう場所にわざと当てることができてしまうのがトップ選手です。
卓球の試合における公平性を担保するためにも、欠けのない平らなラバーは必須条件なのです。
時間管理
時間管理に注意してほしいことは、1分間のタイムアウトとゲーム間の1分間の休憩の時間感覚です。
審判はストップウォッチを使用し、きっちり1分間を測っています。
審判員による試合に慣れている強豪校は、体内時計で1分間が染み込んでいるのか、ほぼきっちり1分以内で戻ってきます。56秒とか、58秒とか。
1分をすぎると、



タイム!
と審判員は手を上げて選手および監督たちに伝えますが、県大会にたまにしか出ないような学校の選手たちは、なかなか戻ってこないことがよくあります。
ルールを知らなければ戻って来れるわけがないので、初回は優しく教えます。
サービストス
これは本当に多いです。
主審の主観によるところが大きく、甘い人もいれば厳しい人もいます。
- ボールを投げる手は、必ず台より上
- サービスを出すときは一旦静止してから、ボールを投げ上げる
- ボールを真っ直ぐ上に16cm以上投げ上げる
これらを注意すると、



えっ!そうだったの?ずっと間違えて覚えていて、間違ったサービス練習をしていたんだ。
とショックを受ける選手もかなりいます。
これは中高生選手の責任ではなく、卓球を教える指導者に原因があります。
- 指導者が正しいサービスのルールを知らない
- 「審判員にバレなければいいから」と間違ったサービスを指導する
といった驚くような指導実態が背景にあることもあります。
日頃から正しいサービスを出せるように練習してください。
中学生のサービスは、本当にひどい例が散見されます。
正しいサービストスの上げ方について、詳しくは下記をご覧ください。


審判に要求して良いこと





審判員なんて怖い人のイメージがある!なんか言いたいことあるんだけど、言いづらいな
なんて思わないでください。
主役は選手です。審判員は試合をスムーズに進行するために存在しているだけです。
タイムアウト
タイムアウトは1試合に1回のみ、大会規定によりますが、選手および監督が申請することを許されます。
ただ、試合会場はうるさいためタイムアウトの声が聞きづらいので、できればジェスチャー(手をT字に組む)による合図を送りながら、



審判!タイムアウトお願いします!
といってくれると気づきやすくてありがたいです。
正面を向いている選手や監督は気づいているけれど、横を向いている審判だけ気づいていなくて、



えっ?なにっ?いまタイムアウト取ったの?えっ?どっち?
なんて、両選手がお互いのベンチに同時に入っていくのを見て、はじめてタイムアウトを取ったことに気づいて焦ります。
点数のミス
審判員も人間です。
時には、
- どっちに点が入ったのかわからないときがあります
- 場所によってはエッジなのかサイドなのか判断が難しいこともあります
- ネットの判定だって難しいです
間違っていたら、遠慮なく言ってください。
点数を修正するかどうか、最終的には主審の判断なので必ずしも要求が通るとは限りませんが、間違っていることに気づけば修正します。
中学生や高校生の県大会は基本的に甘め


中学生や高校生に対して容赦なく厳しい審判員もいますが、県レベルでは比較的甘めにジャッジしています。
県大会レベルの中学生や高校生で、スペアのラケットやラバーを用意している選手なんて少数派でしょう。
それぐらいのことは審判長もわかっているので、規約違反のラケットでも、特別に許可を出しています。あくまでも特別許可。本来なら使用不可です。そのことをわきまえた上で使用してください。



上位の大会に行けば行くほど通用しないからね。ちゃんとスペアラケットを用意してね。
大会の主役は選手たち
我々審判員は黒子です。
審判員が目立ってしまうような試合は、理想的な試合ではありません。
審判員は試合をスムーズに進行させるために公平なジャッジを行い、試合をコントロールをするのが仕事。
何の問題もなく試合が進行し、選手たちがのびのびと良い試合を魅せてくれたのなら、それは審判員としての仕事が成功したことも示していると言っても過言ではないでしょう。


コメント