キャリアの後半ともいえる32歳にして自らのプレースタイルを根本から変え、自己最高世界ランキングを塗り替えたドイツの卓球選手、ザビーネ・ヴィンター(Sabine Winter)。
それまでは両面裏裏のドライブ主戦型の王道スタイルでしたが、バック側にアンチラバーを採用するという異例の決断が世界の注目を集め、現在はヨーロッパ選手として女子シングルス世界最高位に輝いています。
プレースタイルを変更したとはいえ、元々の攻撃型スタイルを捨てたわけではなく、アンチラバーは彼女の攻撃力を引き立てるものになっています。
本記事では、思い切った戦術変更をしたヴィンター選手のキャリアとプレースタイル、そして使用用具について開設します。
サビーネ・ヴィンター選手の主な実績
プレースタイルを変更する前は、世界ランキング50位前後をうろついていました。
世界ランキング
| 部門 | ランキング | 部門 | 最高ランキング | 取得時期 | |
|---|---|---|---|---|---|
| シニア | 2026年第16週 | 9 | シニア | 2026年第16週 | 9 |
| 女子ダブルス | 2026年第16週 | 19 | |||
| 混合ダブルス | 2026年第16週 | 26 |
2021年には一時115位まで順位を落とした時期もありましたが、そこから着実に復活を遂げ、2024年末には58位、プレースタイルを変更して以降は急激にランクを上げ、33歳にして自己最高ランクの9位にまで上りつめています。
つぶまるキャリアとしてはかなり遅咲きですね。
主な戦績
| 開催年 | 大会名 | 種目 | 成績 |
|---|---|---|---|
| 2010年 | 世界卓球選手権(チーム)ロシア大会 | 女子チーム | 3位 |
| 2013年 | 欧州選手権(シュウェヒャット) | 女子ダブルス | 優勝 |
| 2013年 | ITTFワールドツアー ベラルーシオープン | 女子シングルス | 優勝 |
| 2016年 | 欧州選手権(ブダペスト) | 女子ダブルス | 優勝 |
| 2017年 | ヨーロッパTOP16 | 女子シングルス | 3位 |
| 2020年 | 欧州選手権(ワルシャワ) | 女子ダブルス | 優勝 |
| 2022年 | 欧州選手権(ミュンヘン) | 女子シングルス | 3位 |
| 2022年 | 欧州選手権(ミュンヘン) | 女子ダブルス | 3位 |
| 2025年 | ヨーロッパTOP16 | 女子シングルス | 優勝 |
| 2025年 | WTTチャンピオンズ モンペリエ | 女子シングルス | 準優勝 |
WTTチャンピオンズ・モンペリエ」では、WTTチャンピオンズ大会の決勝に進出した初のヨーロッパ人選手。
2015年のペトリッサ・ゾルヤ(Petrissa Solja)に続き、ワールドカップでメダルを獲得した2人目のドイツ人選手です。
国内タイトル
- ドイツ選手権 女子シングルス 2回優勝
- ドイツ選手権 女子ダブルス 8回優勝
ザビーネ・ヴィンター選手のプレースタイル
元は裏裏のドライブ主戦型の王道スタイルだったヴィンター選手。
プレースタイルの変更は、彼女に何をもたらしたのでしょうか。
プレースタイルの変遷と飛躍
プレースタイルを変更する前のヴィンター選手のプレー
ヴィンター選手はもともと典型的な両ハンド攻撃型の選手でした。
フォアハンドを武器としながら、バックハンドでも攻める王道のドライブ主戦型スタイルです。
ドイツ女子のエース格として長年活躍し、欧州選手権でのタイトル獲得も経験していますが、世界ランキングは長らく50〜80位台を推移し、ブレイクスルーには至っていません。
転機は2024年末。
32歳というトップアスリートとしてはキャリア終盤とも言える年齢で、ヴィンター選手はInstagramで大きな決断を公表します。
バックハンドをアンチラバーに変えます!
というプロ選手としては異例の挑戦。
この電撃発表に「彼女の国際的なキャリアの終焉」を誰もが予測していました。
なぜなら、現代卓球でアンチラバーは「素人が使うラバー」というイメージが強く、プロレベルで使用するのはルクセンブルクのルカ・ムラデノビッチ選手などごく一部であり、はほぼ見かけない存在だからです。
そんな周囲の評価とは裏腹に、スポンサーのANDROと連携して特製のアンチスラバー開発にも踏み込み、
アンチラバーのイメージを変えたいの!今まで誰も見たことのないアンチプレーを見せてやるわ!
有言実行!
その言葉どおり、2025年を通じてランキングは急上昇!
30歳を過ぎた女子選手が卓球界に前例のないサクセスストーリーを、今も描き続けています。



どこまで行くか、ある意味最も注目を集めている選手と言えるね。
現在のプレースタイル
現在のヴィンター選手は、強力なフォアハンド攻撃を主軸に置きつつ、バック側のアンチラバーでを徹底的に崩すという独特のスタイル。
試合展開は、バック側のアンチラバーを使ったブロックで相手の強烈なドライブ回転を無効化し、甘いボールが来た瞬間に強烈なフォアハンドで得点を決めるスタイル。
アメリー・ゾルヤ選手やルカ・ムラデノビッチ選手はアンチラバーの性能に頼る守備的なプレーですが、それとは対象的に、ヴィンター選手はオールフォアと言ってもいいほどかなり攻撃的なスタイルです。
しかも単純な「守備からのフォアハンド攻撃」ではなく、ラケット反転を多用して相手をさらに翻弄する特徴があります。
バック側のアンチによる打球が来ると予想した相手が構えた瞬間、ラケットを反転させて裏ソフトラバーで強烈なバックドライブを打ってくるため、相手は対応しきれずミスを連発します。
2025年のWTTヨーロッパスマッシュでは中国の陳幸同を撃破。WTTチャンピオンズ モンペリエでは王藝迪を最終ゲームデュースまで追い詰め、準優勝を果たしました。



世界のトップ選手ですら、反転技に苦しめられているのがよく分かるね。
独自打法「UFOショット」
ヴィンター選手の代名詞となりつつある技術が「UFOショット」。
これはバックハンド側にボールが来た際、アンチスピンラバーを使わず、また反転もしない状態で、腕を内側に捻り、フォア側の裏ソフトラバーで攻撃する技です。
通常のフォアハンドが身体の右側から打つのに対し、身体の左側(バック側)からラケットのフォア面で打つこの打法は、相手にとってしてみれば、球質・コース・タイミングのすべての予測を困難にしています。
普通にバックハンドを打っているように見えるかもしっれませんが、最初の数秒のラケット面に注目してください。
バック面ではなく、明らかにフォア面で打っています。
ラケットを反転させて裏ソフトラバーで打っているため、通常のバックハンドとの見分けがつきにくいかもしれませんが、ラケットのフォア面で打っています。
実際にやってみるとわかりますが、技術的な難度は非常に高いです。
ヴィンター選手自身も「楽しみながら習得している最中」とのことです。
アンチラバーによる変化とUFO打法による攻撃を同じバックハンド側から繰り出されたら、相手はより一層対応が難しくなること間違いなしです。
卓球の多様性と、選手の創意工夫が戦術に革新をもたらす一例とも言えますね。



UFO打法はもちろんのこと、ラケットの反転技術からしてすごすぎる。
ザビーネ・ヴィンター選手の使用用具
ヴィンター選手はドイツの卓球用具メーカーANDROとスポンサー契約を結んでおり、ラケットとフォア面ラバーはANDROの製品を使用しています。
ラケット:ANDRO Novacell OFF/S
5枚合板のオールウッドブレードで、カーボン等の特殊素材を使わない純木材構成のラケット。
アンチスピンを使うスタイルに合わせ、コントロール性を重視した選択と言えます。
フォアハンドの強打にも対応できる弾みを持ちつつ、アンチラバーとの組み合わせで球質の変化を最大限に引き出す設計ですね。
フォア面:ANDRO NUZN 55
ANDROが開発した高性能裏ソフトラバーで、ヴィンター選手は黒色・厚さはMAXを使用しています。
強いトップスピンと爆発的なスピードを生み出すラバーで、ヴィンター選手の強烈なフォアハンドはこのラバーから生み出されています。
アンチラバーのバック面とは対照的に、フォア面はこの攻撃的なラバーで一気に仕留めます。反転してバックハンドでも使用。
吉山僚一選手もこのラバーを使用しています。
バック面:Dr. Neubauer ABS 3
ヴィンター選手は1.7mmの厚さを使用しています。
Dr.ノイバウアーはアンチ・表ソフト・変化系ラバーを専門とするドイツブランド。
ABS 3は世界最高水準のアンチラバー。相手の強烈なドライブ回転を無効化し、遅くて無回転に近いボールを返球する特性を持っています。
かつてはANDROのラスター系ラバーをバック面に使用していましたが、アンチラバーを導入してからはこのDr.ノイバウアー製品。
とはいえ、ANDROとも連携してアンチラバー製品の開発を進めているそうです。



ANDROはアンチラバーを出していないもんね。ANDROとしてもアンチラバーを開発したいのかも。


















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