卓球は、障害を持つ方々にとっても楽しむことができる数少ないスポーツ。
オリンピックの後に行われるパラリンピックでも、障害を持つ日本人選手が活躍し、メダルを獲得しています。
身体障害者にも、健常者と同じルールが適用されるの?なにか特別なルールがあるの?
障害者が競技をするに当たり、障害を持っていても公正なプレーができるように、特別ルールが適用されます。
本記事では、身体障害者向けの卓球ルールについて詳しく解説します。
特別ルールは健常者対身体障害者の試合でも適用されるので、覚えておくと良いでしょう。
本記事でパラ卓球のルールを深く理解することで、障害者選手の方は自分の卓球がより楽しく、そうでない方はパラ卓球の観戦をより楽しめるようになるかもしれません。
パラ卓球の基本概念
パラ卓球とは、身体に障害を持つ選手が参加する卓球のことです。
国際卓球連盟(ITTF)のルールに基づき、選手の障害に応じた特別な規定が設けられています。
パラ卓球はパラリンピックの正式種目であり、障害を持つ選手が自分の限界に挑戦し、スポーツを通じて成長する機会を提供しています。
パラ卓球のクラス分け
パラ卓球では、選手の障害の種類や程度に応じてクラス分けが行われます。
選手は医師による評価を受け、適切なクラスに分類されることで、異なる障害を持つ選手が同じ競技条件で競い合えるようになります。
主なクラス分けは以下の通りです。数字が小さくなるほど、障害が重くなります。
- クラス1~5:車椅子を使用する選手向けのクラス。このクラスでは、体幹や下肢に障害がある選手が主に参加します。
- クラス6~10:立位でプレーする選手向けのクラス。腕や足に障害がある選手が対象です。
- クラス11:知的障害を持つ選手向けのクラス。卓球は、知的障害者クラスがある数少ないスポーツです。
障害者だからといって侮るなかれ。パラリンピックに出場するような選手は、健常者と戦っても結構強いのです。
同じクラスでも、障害の部位や程度は十人十色。
各選手、自分の障害に合わせたプレースタイルを確立させているため、同じ型は2つとありません。
パラ卓球の中で、知的障害者のクラス11に関しては、健常者と全く同じルールが適用されます。
パラ選手向けの特別ルール
パラ卓球のルールは、基本的に健常者向けの卓球ルールに準じていますが、特定の障害に対応するための特別な規ルールがあります。
サービスでは、障害のためにボールの投げ上げといった正規のサービスを物理的に行うことが難しい場合、主審判断で緩和されます。
また、動きが制限される車椅子選手でも楽しめるように、サービスとダブルスに車椅子選手用の特別ルールが、ルールブックには明記されています。
サーブに関するルール
選手の障害に応じてサービスのルールは主審判断で適用が緩和されます。
どの程度緩和するかについて、主審は選手の障害の程度から判断し、試合前に副審と基準を一致させておきます。
サービスの判定に関しては副審も同じ権限を持っているので、緩和基準がバラバラだとおかしなことになってしまうからね。
選手によっては、手を開くことができなかったり、投げ上げるための手がなかったりした場合、健常者と同じようなサービスは物理的に無理です。
そのような場合、選手の残された体の部分からボールを投げ上げることが許されています。
東京パラリンピック2020で、クラス6で出場したエジプトのイブラハム・ハマト選手は両手がなく、サーブのときは足でボールを投げ上げていました。
両手がなくても卓球ができる!そんな希望を見せつけてくれる選手です。それにしても、器用ですね。
車椅子選手用サービス規定
下記のような場合、健常者はレットになりませんが、車椅子選手が相手の場合はレットです。
- サービスが、ネット側に戻ってきた場合
- サービスが相手のコート上で止まった場合
- 相手のコートでバウンドした後、サイドラインを横切った場合
上記のようなサービスは車椅子選手の場合は届きませんし、すぐには対応できないので、レットになるのでしょう。
ボールが相手コートで止まったり、戻ってきたりするような強烈な下回転のかかったサービスなんて、健常者でも対応が難しいボールですが、なんとか打てるボールです。
しかし車椅子選手を相手にする場合は不公平とみなされるため、レットになります。
ラリーに関するルール(車椅子選手限定)
ラリーに関して、健常者のルールと異なっている点は以下の3点。
- 大腿部を浮かしてはならず、足をついてはならない
- 打球し終わった後、体勢を整えるためにラケットハンドでテーブルに触れることができる
- ダブルスは、パートナーと交代交代に打つ必要はない
大腿部を浮かしてはならず、足をついてはならない
障害の程度にかかわらず、同じ条件で公平に試合を行うために設けられているルールです。
お尻を持ち上げることぐらいならできる選手もいるかもしれませんが、それでは不公平になってしまうので、平等になるように浮かせてはならないというルールです。
足をついてはならないというのも、同様の考えだと思われます。
おしりが浮いたり、足が床についてしまった場合は、相手のポイントになります。
体勢を整えるためにラケットハンドでテーブルに触れられる
車異種選手は、体勢を整えるためにラケットハンド(ラケットを持っている手の手首から先)でテーブルに触ることはできます。しかし、
台を動かしてはならない
という条件がつきます。
思いっきり反動をつけて体勢を整えようとすると、台が動いてしまいますので、要注意。
体勢を整えるためとはいえ、台を動かしてしまった場合はムーヴド・テーブル(Moved Table)というルール違反になります。
また、テーブルにラケットハンドをついて体勢を整える際、ラケットでテーブルを傷つけてしまう可能性があります。
それゆえこの様な選手のラケットは、台を傷から守るため、多少ラバーがはみ出していても許可されています。
健常者の場合はN.G.だから、ラバーはラケットの端に沿ってきっちり切ってください。
触れて良いのはラケットハンドのみで、フリーハンドの場合は健常者と同様にいかなる場合も違反となって、相手にポイントが入るよ。
ダブルスのルール
最初のサーバーとレシーバーは決まっていますが、レシーバーが打った後の打つ順番は決まっていません。
健常者のダブルスは、パートナーと交代交代で打たなくてはいけなかったはずだけど、同じ選手が2回打ってもいいの?
車椅子で交代交代打つのは、転倒の危険性が高くなるから、多分やらないんだと思う。
ダブルスにおいては、少なくとも競技者のうち一人が、身体的障害により車椅子を使用する場合は、最初にサーバーがサービスを行い、次にレシーバーがリターンを行う。その後は、身体的障害を持つ組のどちらの競技者がリターンを行ってもよい。
日本卓球ルール 2022
また、車椅子がセンターラインを越えてはならないというルールがあるため、選手は車椅子を細かく動かすことはあっても、大きく動くようなことはありません。
車椅子の一部がセンターラインを越えても、相手のポイントになってしまいます。
一般的な健常者のダブルスのルールについて、詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
その他の特別ルール
障害者と言っても十人十色。
障害に応じた特別措置が、他にもあります。
ラケットの括り付け
手首がない選手は、ラケットを手にくくりつけてプレーしていることがあります。
ゲーム間の1分間の休憩時間、本来ラケットは台上に置いておかなければなりませんが、主審判断でラケットを括り付けたままでも休憩時間が許可されます。
主審の許可がない限り、競技者はマッチにおける休憩時間中、タイムアウト中及び中断されている間は、自分のラケットをテーブルに置いておかなければならない。ただし、身体的障害により手にラケットをくくりつけている場合は、主審は休憩時間の間そのままの状態を許可するものとする。
日本卓球ルール 2022
パラリンピックを見る限り、選手たちは律儀に毎回ラケットを外してるのしか見たことないですけれど……。一応はつけたままでも良いみたい。
休憩時間の延長
障害によっては疲労しやすく、ときにはプレーが続行できないような症状を呈することもあるかもしれません。
その場合、審判長は競技担当医師と相談の上、最大10分までの休憩が認められることがあります。
ただし、10分を超えてしまうような場合は、いかなる場合でも失格になります。
最後に
パラ卓球は、すべての選手が公平に競技を楽しめるよう、主審判断でサービスのルールが緩和されたり、車椅子選手のために特別なルールが設定されています。
これらのルールは、選手の障害に応じた配慮を行うことで、障害者でも最大限の能力を発揮できるようにデザインされています。
生まれながらの障害者もいれば、事故や病気で障害者になった選手もいます。
障害を持ってしまったことに対し、一時は落ち込んだり悩んだりしたことがあったかもしれません。
しかし卓球を通して日々の生活が楽しくなり、楽しく前向きに打ち込んでいる姿には、感動すら覚えます。
私の身内にも障害者がいることもあり、パラ卓球選手たちを応援せずにはいられません。
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