卓球の試合を見ていて、

この試合はいつ終わるのだろう?
と思うほど長いラリーが続く試合を見たことはありませんか?
特に粘り強いカットマンの試合は長くなることが多く、1時間38分という記録まであります。
トップ選手同士なら長いラリーでも観客を楽しませてくれますが、一般の大会では試合が長引きすぎると大会進行に大きな影響が出てしまいます。
そんな試合をスムーズに進行させるために導入されたのが「促進ルール」です。
卓球の「促進ルール」とは、1ゲームが10分を超えても決着がつかない場合に適用される特別ルールで、以下のような特徴があります。
- 1本ごとにサーブを交代する
- 13回の返球を成功させるとレシーバーの得点になる
促進ルールは選手の戦略や戦術に大きな影響を与え、試合をよりダイナミックに、よりスピーディに展開するための重要な要素。
本記事では、審判員目線で卓球の促進ルールの適用条件や進行手順、そして戦術への影響について詳しく解説します。
促進ルールを理解しすれば、試合観戦の楽しみが一層増すこと間違いありません。
促進ルールとは


促進ルールとは、卓球の試合において試合が長引きすぎるのを防ぐために適用される特別ルールです。
ラリーが長く続き、なかなか得点が入らない試合では、1ゲームに非常に長い時間がかかることがあります。
そのような場合に促進ルールを適用し、試合の進行を早めます。
促進ルールが必要な理由
促進ルールが必要とされる最大の理由は、試合の時間管理です。
卓球の試合では、まれにラリーがあまりにも長く続き、ポイントがなかなか決まらない事態が発生することがあります。
大会運営上の理由
大会では、多くの試合が同時進行しています。
極端に長引く試合が一つでもあると、トーナメント全体の進行が止まってしまいます。
特に大会運営者にとっては、試合が予定通り進行しないことは大きな問題。体育館の使用契約等の関係から、予定時間内に大会を終わらせなければなりません。
選手の負担軽減
選手にとっても、長時間にわたる試合は体力的・精神的に負担がかかります。
促進ルールは、試合時間を適切に管理することで選手の負担を軽減し、公平な競技環境を維持しています。
さらに、観客にとっても、ダラダラと続く試合よりも、テンポよく進行する試合の方が見ていて面白いです。



促進ルールが適用された途端、試合展開がダイナミックに、そしてスピーディになって、面白い展開になることはよくあるよね。
促進ルールの適用条件
促進ルールは、以下の条件が満たされたときに促進ルールが適用されます。
- 1ゲームが10分を超えても終了せず、両プレーヤーの合計得点が18点に達しない場合
- 選手同士が合意をし、促進ルールを要請した場合
1.15.1:[1.15.2]の場合を除いて、ゲーム開始後10分経過した場合は、促進ルールが適用される。また、両方の競技者または組から要請があった時には、いつでも促進ルールが適用される。
1.15.2:両方の競技者または組のポイントスコアの合計が、少なくとも18ポイントに達した場合には、促進ルールは適用されない。
日本卓球ルールブック 2025
この条件に該当する場合、試合の進行を円滑にするために促進ルールが導入されます。
例外的に、本来であれば促進ルールを採用しない大会でも、審判長判断で促進ルールを適用するときがあります。



敗者審判の試合でも、促進が適用されると、敗者審判員は公認審判員と入れ替わった上で、促進ルールを適用するから、安心してね。



良かった!敗者審判ぐらいならできるけど、促進ルールの時の審判の仕方なんて分からないもの。代わってくれるなら安心だわ。
1ゲームが10分を超えても終了せず、両プレーヤーの合計得点が18点に達しない場合
審判はストップウォッチで試合時間を測定しています。主審のみの場合は主審が、副審がいるときは副審が時間を測定しています。(大きな大会では、タイムキーバーがいる場合もあります)
タイムアウト時間を除き、試合時間が10分を経過し、点数の合計が18点未満のときに促進ルールが適用されます。
10分を経過した時、
- 9-9
- 10-8
- (デュース)
というパターンは18点以上であるため、促進ルールが適用されません。これ以外のパターン時に適用されます。
選手同士が合意をし、促進ルールを要請した場合
試合を始める前、お互いに相手を見て、



試合が長引きそうだから、最初から促進ルールにしない?
と選手同士が話し合いをして促進ルールを要請するときがあります。
特に何度も対戦経験のあるベテランカットマン同士の場合、試合を無駄に長引かせずに、体力を温存したいという意思が働きます。
審判長判断で促進ルールを適用する場合
まれにですが、審判長判断で促進ルールを適用する場合があります。
促進ルールは、通常、公認審判員による審判が行われる試合で採用されます。
大会によっては、最初の方は敗者審判で行い、ベスト〇〇になってから公認審判員が付き、促進ルール適用条件を満たした場合に促進ルールを導入するということもあります。
しかし以前、こんな事がありました。
まだ敗者審判で行う段階の試合で、異常に長引いた試合がありました。
他のブロックはどんどん進んでいるのに、とある試合があまりにも長引いてしまったため、トーナメントを進めることができません。



あそこの試合のラリー、どちらも全然ミスしなくて、あのラリーだけもう200回以上続いてない?
異常に長いラリーが続いているために試合が長引いていることに気づいた審判長は、試合途中にも関わらず、すぐに敗者審判を公認審判員と交代させ、促進ルールを適用させました。



1本が決まるまで20分以上もかかっていたのに、その後の展開は早い早い!
促進ルール時の変更点
促進ルールが適用されると、試合の進行方式が以下のように変更されます。
- 1本とごとにサービスを交替する
- レシーバーが13回のリターンに成功するとレシーバーにポイントが入る
1.15.4:ゲームが終了するまで、競技者は1ポイントずつ交替してサービスを行う。また、レシーバー側が1度のラリーにおいて13回のリターンに成功した場合、レシーバー側に1ポイントが与えられる。
日本卓球ルール2025
1本ごとにサービスを交代する
通常のルールでは2ポイントごとにサービスを交替しますが、促進ルール下では1ポイントごとに交替します。
1ポイントごとに交代することで、サーブとリターンの機会が公平になります。
レシーバーが13回のリターンに成功するとポイントが入る
促進ルールが適用されるとき、主審は審判長に報告し、審判員(ストロークカウンター)を1人増員します。
ストロークカウンターが到着するまで、副審がラリー数を数えます。



One、Two、Three、……
ラリー数は1往復で1カウントです。
この時ストロークカウンターはレシーバーの方に身体を向け、レシーバーの打球数のみをカウントします。
どちらもポイントを取ることができず、13回ラリーが続いてしまった場合はラリーを終了し、レシーバーに得点が入ります。
なお、13回目の返球は相手コートに入っている必要はなく、ラケットに当たりさえすれば返球に成功したと見なされます。
このルールのお陰で長いラリーが早期に決着し、試合の進行を早めることができます。
促進ルールを導入する時の流れ


促進ルールを導入するときは、以下のような流れになります。
1.15.3.1:ボールがインプレーの場合は、主審はそのラリーを中断し、次いで中断されたラリーにおいてサービスを行った競技者のサービスで競技を再開する。
1.15.3.2:ボールがインプレーでない場合は、直前のラリーでレシーブした競技者のサービスで競技を再開する。
日本卓球ルール2022
審判員は試合時間を測定しています。
主審のみの場合は主審が、主審・副審体制のときは副審がストップウォッチを持って試合時間を測定しており、試合時間が10分経過したことを確認します。



10分が近づくと、審判員も心中ソワソワしだします。
審判は適用のタイミングを判断し、試合を一時中断し、「促進ルールの適用」を宣言します。
ラリー中なら、



レット
と審判は言って、ラリーを中断し、ラリー中でない場合は、



ストップ
と審判は試合を一時中断します。
審判員は選手に対し、促進ルールによる変更点
- 1ポイントごとにサービスを交代すること
- 13回のリターンでレシーバーに点数が入ること
などを簡潔に説明し、選手が理解したことを確認します。選手が不明点や疑問点がある場合、その場で質問に答え、疑問を解消しておきます。
選手が促進ルールを理解したことを確認したら、審判は試合再開の合図(ポイントコール)を出します。
再開時のサーバーは以下の通りです。
- 促進ルールに入る時にラリー中であれば、その時サービスを出していた選手からサービスを開始
- ラリー中でなければ、直前のラリーでレシーバーだった側からサービスを開始
促進ルールが導入された試合は、残りのゲームはすべて促進ルールで行われます。
2ゲーム目で促進ルールが適用されると、3ゲーム目や4ゲーム目は最初から促進ルールで行われます。
1.15.6:促進ルールが適用された場合、そのマッチの残りのゲームは促進ルールで行われる。
日本卓球ルール2025
促進ルールが適用された場合の戦術の変化


促進ルールが適用された場合、一般的なポイントルールに加え
- サーバーは13回以内にポイントを決めなければならない
- レシーバーはとにかく13回ボールを返せば自分の得点になる
という条件が入るため、選手によっては戦術の変更を余儀なくされます。
サーバー側の戦術
サーバーは13回以内にポイントを決めなければならないので、守備的な選手でも、より攻撃的な返球を心がけるようになります。
- 攻撃的なサービス
-
13回以内で決めるとは思わずに、サービスエースや3球目攻撃をより積極的に仕掛けることを前提に、サーブの回転やコースを考え、相手にプレシャーを与えます。
- 速い展開のラリー
-
スマッシュやスピードドライブを駆使し、レシーバーの守備を崩してポイントを取りにいきます。結果として、試合展開が早くなります。
レシーバーの戦術
レシーバーは、とにかく13回返球すれポイントになるので、攻撃的な選手でも守備的になることがあります。
- 安定したリターン
-
リターンが13回成功すればポイントが得られるため、ミスのない安定したリターンが重要。
無理に攻めず、確実に返球していけばポイントを取れます。
- 相手のミスを誘う
-
相手の攻撃に対して冷静に対応し、相手がミスをするまで粘る戦術も有効です。特に、相手が焦って攻撃してくる場合には、そのミスを誘うようなプレーを仕掛けましょう。
メンタル面の変化
促進ルールが適用されると、試合のプレッシャーが増し、プレーヤーによっては以下の能力の低下が見られます。
- 冷静な判断力
- 集中力の維持
- 強気の姿勢
特にサーバーは、攻撃を焦って自滅してしまわないように、上記3つのメンタルを維持することが求められます。
促進ルールのよくある疑問
- 10分経ったら必ず促進ルールになるの?
-
ポイントの合計が18点以上なあら適用しません。
- 促進ルールが適用されるのは、そのゲームだけ?
-
1ゲーム目で促進ルールが適用されたら、その後のゲームもすべて促進ルールが適用されます。
- 13回打ったら終わっていいの?
-
レシーバーが13回打ったら、審判はストップをコールし、レシーバーにポイントを入れます。
まとめ
促進ルールは単なる時間短縮ルールではありません。
卓球の試合において、促進ルールは試合の進行をスムーズにし、選手にとっては体力への負担を減らし、観客にとっては試合を面白くする重要なルールです。
促進ルールの重要性
促進ルールを適用することでもたらされるメリットは、以下の4つです。
- 試合時間の管理
-
促進ルールは試合が長引きすぎることを防ぎ、試合時間を適切に管理するための手段の一つです。これにより、大会全体のスケジュールが大きく乱れることを防ぎます。
- 選手の体力管理
-
長時間の試合は、選手にとって体力的にも精神的にも大きな負担になります。促進ルールは試合時間を制限することで、選手の負担を軽減し、公平な競技環境を維持します。
- 顧客満足度の向上
-
試合がスムーズに進行することで、観客にとっても観戦がよりエキサイティングで楽しいものになります。展開の早い試合は観客の関心を引き続けるため、スポーツの魅力をより一層高めてくれます。
- 戦術の多様化
-
促進ルールは選手に新たな戦術を考える必然性をもたらします。攻守のバランスが変化し、通常とは異なる駆け引きが生まれます。
審判員を目指す方へ
促進ルールの適用場面は稀ですが、審判員試験では必ず出題される重要項目です。
- 10分経過時のコール
- ストロークカウンターの数え方
- 選手への説明とゲーム再開
これらを理解し、いざという時に慌てず落ち着いて対応できるようにしてください。

















コメント